6月は演奏会だらけ~ その3
6月の演奏会第3弾・・・最終回は6月28日です。
パイオニア交響楽団第36回定期演奏会 サンパール荒川大ホール
指揮 高橋俊之
シューベルト 劇音楽「ロザムンデ」序曲
ベートーヴェン 交響曲第1番ハ長調
チャイコフスキー 交響曲第5番ホ短調
さて、3つが重なってしまった6月最後の演奏会です。会場のサンパール荒川は初めての会場。
毎年演奏会場がほぼ固定されている和光市民オーケストラと異なって、パイオニア交響楽団は本当のジプシー楽団。
私が入団してからは、15か所目(海外公演、特別公演除く)の会場になります。
プログラムは超ハード。
「ロザムンデ」序曲は、元々は「魔法の竪琴」という劇音楽の序曲として作られたもの。だいたい劇音楽「ロザムンデ」専用の序曲は存在しておらず、初演の時は序曲の作曲が間に合わず「アルフォンゾとエストレッラ」という歌劇の序曲を転用。その後序曲をきちんと書き直せばよかったのに、それをせず、この「魔法の竪琴」の序曲を転用して、そのまま現在に至っているわけです。まあ、シューベルトのムラ気は有名な話で、だからこそ「未完成交響曲」が何故未完成に終わったのかという命題に諸説が語られるわけですが。なので当然「ロザムンデ」の中身とは全く関連性の無い序曲というわけです。1つのオペラに4つもの序曲を次々と書いたベートーヴェン(フィデリオの事です)とは正反対です。
ベートーヴェンの交響曲第1番は、2回目。もっとも前回取り上げた定期演奏会の後ベルギー公演でもやっているので3回以上は弾いています。
ベートーヴェンの交響曲の中ではどちらかと言えば地味な曲で、まだハイドン・モーツァルトの世界からほんの少し足を踏み出したといった感じの曲です。第1楽章の序奏の冒頭、普通だと主和音から始まりますが、この曲は属七、いわゆるドミナントコードから始まります。曲の頭が主和音(トニック)で始まらないのはベートーヴェンの交響曲の中では、この曲と第九だけです。
第2楽章の始まりは、モーツァルトの40番によく似ています。第3楽章はメヌエットと書かれていますが、どう見てもスケルツォ。ベートーヴェンの第3楽章で明確なメヌエットは第8番だけです。(第九は第2楽章にスケルツォが来ています)
第4楽章はとっても楽しい楽章です。突然pからfになる箇所が2か所。ハイドンの「驚愕」のミニ版です。実はここは版によってフォルテになる箇所が異なっているという事で、本来のベトーヴェンの譜面では、なるべくしてならないところからフォルテになるのですが、ベーレンライター版では、これはベートーヴェンの記譜ミスとして、つまらない当たり前の所からフォルテになる・・・面白く無いです。
チャイコフスキーの交響曲第5番は3回目の演奏です。表情の変化が激しく同じチャイコフスキーの第4番や悲愴に比べてメロディックな曲で日本人には大変な人気曲です。特徴は、「運命の主題」とも言われるメロディが全ての楽章に現れる事です。
第1楽章 序奏に「運命の主題」がホ短調でクラリネットによって現れ、主部に入ると「運命の主題」から派生した第1主題がクラリネットとファゴットで提示されます。第2主題は弦楽器によって奏でられるワルツのような旋律。コーダは最後にファゴット、チェロ、コントラバス、ティンパニが残って第1主題が反復され次第に静かになり、最後は消えるように楽章を終えます。低弦が最後に残るのはチャイコフスキーの常套手段です。
第2楽章 弦楽器の低音によるコラーフ風の前奏は緊張します。何かの楽器の音程が少しでもズレると楽章全体を壊してしまいそう。途中も1か所コントラバスが裸になるところがあって、そこが見せ場のひとつです。
第3楽章 ワルツの楽章。3つのワルツが現れ、コーダでは「運命の主題」が静かに現れ、最後に強い和音で閉じられます。この楽章はコントラバスはそれ程難しく無いので気持ち的には一休み。
第4楽章 序奏は「運命の主題」がホ長調で現れ、クライマックスが築かれ、ティンパニとトレモロとコントラバスが残り、テンポを急速に早めて第1主題に入ります。ここのうねりはコントラバスならでは。主部に入ると高速の分散和音の連続やらダウンボウの連続やら目と手の疲労は極限に達しながら「運命」との戦いの勝利を高らかに歌って曲を閉じます。
どの曲も、初めての曲では無いので、前回弾いた時とは違う音楽を表現できればと思っています。