3月9日 名曲100選 舞台芸術のための管弦楽曲篇・79 レオノーレ序曲第3番
ベートーヴェンは生涯ただ1曲、オペラを完成しています。それが歌劇「フィデリオ」です。
原作は、ジャン・ニコラ・ブイイの同名小説ですが、ベートーヴェンの作品中最も難産に見舞われた曲として知られています。
主人公レオノーレが「フィデリオ」という名で男性に変奏して監獄に潜入して、政治犯として拘禁されている夫フロレスタンを救出する物語です。
このオペラは成功を収めるまでにいくつもの版に書き直されていて、その序曲も数回書き直されています。
この物語は、1798年にガヴォーが「レオノール」というタイトルで作曲され、1804年にフェルディナンド・パエールが「レオノーラ」というタイトルで作曲しているため、ベートーヴェンは「レオノーレ」というタイトルで上演したがりましたが、混同を避けるため劇場は「フィデリオ」のタイトルで上演する事にしてアン・デア・ウィーン劇場で初演されましたがナポレオンのウィーン侵攻の影響で観客の大半がフランス人だったためドイツ語を理解できず大失敗に終わりました。この時の序曲は現在レオノーレ序曲第2番とされているものです。
その後2幕物のオペラに改作され1806年に第2稿が初演されましたが興行主のブラウン男爵との金銭トラブルからその後演奏される事はありませんでした。この時の序曲が、最も有名な「レオノーレ」序曲第3番とされているものです。但し、第3番はあまりに内容が濃密すぎたためその後、もっと軽い序曲へと変更され、この第3番は演奏会用の序曲として演奏されるようになりました。
1810年頃からベートーヴェンの人気が高まり、劇場主などから「フィデリオ」の上演を盛んに打診されるようになり、1814年に上演されたのが最終稿になります。但し、初演の5月23日には序曲の作曲が間に合わず、「アテネの廃墟」序曲で代用し5月26日の上演から「フィデリオ」序曲が演奏されるようになり、現在に至っています。
実は序曲はもう1つ存在していて、1807年にプラハで上演される際に序曲を書き直しています。これがレオノーレ序曲第1番とされている曲です。
「レオノーレ序曲第3番」は4曲の序曲の中で演奏会で単独に演奏される事が最も多い曲ですが、多くの指揮者が歌劇「フィデリオ」の中で使いたがり、マーラーが1904年にフィデリオを指揮した時に第2幕第2場への間奏曲として「レオノーレ序曲第3番」を演奏して以降、そのやり方を踏襲する演奏も少なくないようです。
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