エニグマ変奏曲 part2です。
・第5変奏 "R.P.A." ハ短調 Moderato 8分の12拍子(4分の4拍子) ピアニストのリチャード・P・アーノルド(Richard P. Arnold)の事。彼は詩人マシュー・アーノルドの子供で、彼の真面目な会話は気まぐれで冗談めいた物言いによって、ひっきりなしに中断される・・という事で主題が手音群によって厳粛に演奏されますが、それを遮るように管楽器が気軽な冗談を演奏するという構成。冒頭からファゴットとチェロ・バスによって演奏される主題に並行してヴァイオリンが新たなメロディを奏でます。木管楽器の軽いメロディを挟んで、冒頭のヴァイオリンのメロディを今度は弦楽器がトゥッティで演奏しますが、再び管楽器による軽妙な音楽が遮り、最後は三たびヴァイオリンのメロディが出てきて静かに曲を閉じそのまま第6変奏に入ります。
・第6変奏 "Ysobel" ハ長調 Andantino 2分の3拍子。イソベルは、エルガーがヴィオラの愛弟子イザベル・フィットンに付けたニックネーム。そのためにこの第6変奏ではヴィオラのソロが活躍します。
・第7変奏 "Troyte." ハ長調 Presto 1分の1拍子。建築家アーサー・トロイト・グリフィスの事。ピアノを弾こうと頑張ったがなかなか上達しなかった、不向きな事に熱を上げる姿を描いたもの。冒頭からティンパニとチェロ・バスが無骨なリズムを刻みます。この変奏曲中最も賑やかな曲。コントラバスにとっては最大の難曲。最後の「ジャン ジャン」という音は諦めてピアノの鍵盤の蓋を閉じた音か?
・第8変奏 "W.N." ト長調 Allegretto 8分の6拍子。ウィニフレッド・ノーベリーという女性。のんびり屋の彼女を象徴するゆったりとした優雅なメロディに変奏されています。途中ヴァイオリンが彼女の笑い声を表現します。最後は1st violinがソの音を長く伸ばしたまま第9変奏に入ります。
・第9変奏 "Nimrod" 変ホ長調 Adagio 4分の3拍子 楽譜出版社に勤めるアウグスト・イェーガーにエルガーが付けた愛称。ニムロッドは旧約聖書に登場する狩の名手ニムロデの事。本名のドイツ語のイェーガーJagerが「狩人」や「狙撃手」に通ずることからつけられたようです。非常に気高い人柄で、エルガーは彼と散策しながらベートーヴェンを論じ合い、2人が好きだったベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」の第2楽章の旋律も下敷きにした曲。この曲はアンコールピースなどで単独で演奏される事も多い曲で、日本では映画「のだめカンタービレ」最終楽章前編にも使われました。
・第10変奏 間奏曲"Dorabella" ト長調 Allegretto 4分の3拍子 第4変奏のウィリアム・ベイカーの義理の姪で第3変奏のリチャード・タウンゼンドの義理の姉妹にあたるドーラ・ペニーの愛称。きれいなドラちゃんという意味。彼女の滑舌や笑い声を木管が表現しています。前のめりに聞こえる木管のメロディは実は楽譜上は十六分音符4つという単純なものですが、最初の音にテヌート、後の3音をスタッカートに記譜して前のめり感を出しています。低弦のピチカートも殆ど裏拍(拍の後半で弾く)ので、不思議な感覚の音楽になっています。
・第11変奏 "G.R.S." ト短調 Allegro di Molto 2分の2拍子 ヘレフォード大聖堂のオルガニスト ジョージ・ロバートソン・シンクレア(George Robertson Sinclair)の事ですが、曲は彼の飼い犬ブルドッグのダンを描いたもの。ダンが川に落ちて、陸に上がれる場所を探してバタバタし、陸に上がって喜んで吠えた、という出来事を最初の5小節で表現しています。コントラバスはバタバタと吠え声に参加しています(笑)。とにかく慌ただしい曲です。
・第12変奏 ”B.G.N." ト短調 Andante 4分の4拍子 当時の著名なアマチュア・チェリスト ベイジル・G・ネヴィンソン (Basil G Nevinson)の事。そのためにチェロのソロが活躍する曲です。
・第13変奏 "***” Romanza ト長調 Moderato 4分の3拍子 文字が示されていないため解明されていない曲ですが、途中太鼓のトレモトの上でクラリネットがメンデルスゾーンの「静かな海と楽しい航海」を引用する事もあってオーストラリアに向かって旅立ったレディ・メアリー・ライゴンかエルガーの元婚約者でニュージーランドに移民したヘレン・ウィーヴァーのどちらかと推測されています。
・第14変奏「終曲」 "E.D.U.” ト長調 Allegro Presto 2分の2拍子 エルガーの夫人がエルガーを呼ぶ時の愛称「エドゥー」から、エルガー自身の事と考えられています。ファゴット、打楽器や低弦の後打ちのリズムに乗ってヴァイオリンや管楽器によって断片的に奏でられる旋律が次第に集まってきてフィナーレのテーマになります。途中 第1変奏と第9変奏を引用しつつクライマックスに向かいます。
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