8月20日 名曲100選 管弦楽曲篇・99 惑星
管弦楽曲も残り2曲。まずは、ホルストの組曲「惑星」op.32です。
ホルストの代表作で1914年から1916年にかけて作曲されました。
今でこそ、イギリスを代表する作品のひとつとして認識され、作曲者のホルストもイギリスの有名作曲家のひとりとされていますが、惑星もホルストも20世紀半ば過ぎまでは忘れられた存在でした。
この曲が再評価されるきっかけとなったのが、1961年頃にカラヤンがウィーン・フィルの演奏会で取り上げ、レコーディングをして大評判となった事です。
現在では、「火星」と「木星」は非常に知られた曲となり、特に日本では「木星」は平原綾香が「ジュピター」のタイトルでデビュー曲として歌ってクラシック・ファン以外の間でも有名になりました。
この曲が、半世紀近く埋もれてしまったのには原因があります。1つは編成の問題。4管編成のためアマチュア・オーケストラでは滅多やたらに演奏できる編成では無い事と、最後の海王星だけのために女声合唱が必要な事。演奏するためには、女声合唱団の助けが必要なのですが、わずか数分のために合唱団が無料で或いは参加費を払って協力してくれません。しかもこの女声合唱は舞台の外で歌うので尚更、お金を払って歌ってもらう必要があるわけですから、余計敷居が高くなります。
もう1つは、ホルトスによる厳格な制約。楽器編成の厳守、抜粋演奏の禁止、アレンジの禁止というのがその制約でホルストの死後も遺族によって守られてきました。楽器編成はアマチュア団体に限り編成の縮小を認めていましたが、「木星」だけ演奏したいと考えても認めらなかったので、おのずと演奏される機会が非常に少なかったわけです。
1976年に冨田勲によるシンセサイザー演奏が許可されて、この制約は緩められ、やがて プログレッシブ・ロックや吹奏楽でも演奏されるようになり高い知名度を得るようになったわけです。
曲は太陽系の8つの天体から地球を除いた7曲からなります。冥王星が発見されたのが1930年なのでこの曲には入っていませんが、後にホルスト協会理事の作曲家コリン・マシューズが冥王星を作曲してそれを付け加えて演奏する事もありましたが、2006年に冥王星は惑星から除外されたため余計なお世話だったようです。
各曲には副題が付けられています。
第1曲 火星、戦争をもたらす者 4分の5拍子の「タカタ タン タン タタ タン」の特徴的なリズムに乗った挑発的な曲です。
第2曲 金星 平和をもたらす者 緩徐楽章に相当する曲
第3曲 水星 翼のある使者 スケルツォに相当する曲。
第4曲 木星 快楽をもたらす者 三部形式で第4主題はホルストによって管弦楽付きコラールにも編曲されて、イギリスの愛国的な讃歌として歌われていますし、前述の平原綾香の「ジュピター」もこの旋律を使っています。
第5曲 土星 老いをもたらす者。組曲中最長の曲で、特殊な和音が多用されています。
第6曲 天王星 魔術師。スケルツォに近い楽章です。
第7曲 海王星 神秘主義者。5拍子の曲で後半に女声合唱が加わり、最後は女声合唱のみになりますが、反復記号によって音が無くなるまで繰り返すように指示されています。いわゆるフェード・アウト効果を狙っているため、これも生演奏をしにくい原因になっています。
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