7月31日 名曲100選 交響曲篇・97 交響曲第5番(チャイコフスキー)
チャイコフスキーの交響曲第5番ホ短調op.64は1888年に作曲されています。交響曲第4番から10年ぶりの交響曲で、日本でも大変に人気の高い曲で、ロマン派音楽研究会というサイトが2017年から2018年までの1年間で実施したアンケートではダントツの1位だったそうです。
初演当時はスケルツォの代わりにワルツが使われて軽い音楽だ、などの批判があって評価は決して高く無かったようですが、この曲を気に入った指揮者のニキシュ(19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパで活躍し、ベルリン・フィルの第2の全盛期を築いたと言われている指揮者)が得意のレパートリーとしてヨーロッパ各地で演奏をして成功を収めたことで、広く知られるようになりました。
交響曲全体を支配しているのが第1楽章冒頭の序奏部で提示されるメロディで「運命の動機」と言われています。第1楽章の冒頭ではクラリネットの低音によってホ短調で暗く演奏されるメロディが、全ての楽章に登場し最後はホ長調で華やかに演奏され、運命との戦いの勝利を表現していると見られてチャイコフスキーの「運命交響曲」とも呼ばれる作品です。
第1楽章は「運命の動機」から始まる序奏の後「運命の動機」から派生した第1主題が提示されます。第2主題はチャイコフスキーらしい甘美な旋律が奏でられます。コーダも「運命の動機」に基づく下降音型をベースラインが繰り返す中、暗いまま低音楽器によって重苦しく終わります。
第2楽章は緩徐楽章。ダイナミクスがp4つからf4つまでという広さでドラマチックな楽章です。低弦の静かなコラール風の前奏に続いてホルンで美しい旋律が提示されます。その後オーボエで提示される第2主題はここでは以外にあっさりとしたメロディ。やがて中間部に入るとテンポが速くなってノスタルジックな中間部主題に入ります。やがて感情が高まると「運命の主題」が登場します。運命の主題がクライマックスで突然全休止で終わると、弦のピチカートが静かに始まり、第2楽章最初の主題がヴァイオリンによって奏でられ、今回はこの第2主題がクライマックスを築きます。再度運命の主題が登場し、コーダに向かいます。コーダは第2主題が断片的に歌われ、クラリネットの最弱音で静かに終わります。
第3楽章はワルツ。3つのワルツからできています。コーダになるとクラリネットとファゴットによって「運命の動機」が暗く登場し唐突にフォルティシモで和音が6回打たれて終わります。
第4楽章は長調の「運命の主題」で始まります。主部に入ると激しい第1主題と急速な第2主題が次々と現れ、金管楽器が運命の主題を奏でます。続いて展開部に入り2つの主題が展開され再現部に入ります。属七の和音で全休止になった後、コーダが始まります。コーダは運命の動機が凱旋の行進曲のように高らかに響き、急速なテンポのメロディを経て最後に第1楽章の第1主題が金管によって奏でられ力強く全曲を閉じます。