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2023年7月31日 (月)

7月31日 名曲100選 交響曲篇・97 交響曲第5番(チャイコフスキー)

チャイコフスキーの交響曲第5番ホ短調op.64は1888年に作曲されています。交響曲第4番から10年ぶりの交響曲で、日本でも大変に人気の高い曲で、ロマン派音楽研究会というサイトが2017年から2018年までの1年間で実施したアンケートではダントツの1位だったそうです。
初演当時はスケルツォの代わりにワルツが使われて軽い音楽だ、などの批判があって評価は決して高く無かったようですが、この曲を気に入った指揮者のニキシュ(19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパで活躍し、ベルリン・フィルの第2の全盛期を築いたと言われている指揮者)が得意のレパートリーとしてヨーロッパ各地で演奏をして成功を収めたことで、広く知られるようになりました。
交響曲全体を支配しているのが第1楽章冒頭の序奏部で提示されるメロディで「運命の動機」と言われています。第1楽章の冒頭ではクラリネットの低音によってホ短調で暗く演奏されるメロディが、全ての楽章に登場し最後はホ長調で華やかに演奏され、運命との戦いの勝利を表現していると見られてチャイコフスキーの「運命交響曲」とも呼ばれる作品です。
第1楽章は「運命の動機」から始まる序奏の後「運命の動機」から派生した第1主題が提示されます。第2主題はチャイコフスキーらしい甘美な旋律が奏でられます。コーダも「運命の動機」に基づく下降音型をベースラインが繰り返す中、暗いまま低音楽器によって重苦しく終わります。
第2楽章は緩徐楽章。ダイナミクスがp4つからf4つまでという広さでドラマチックな楽章です。低弦の静かなコラール風の前奏に続いてホルンで美しい旋律が提示されます。その後オーボエで提示される第2主題はここでは以外にあっさりとしたメロディ。やがて中間部に入るとテンポが速くなってノスタルジックな中間部主題に入ります。やがて感情が高まると「運命の主題」が登場します。運命の主題がクライマックスで突然全休止で終わると、弦のピチカートが静かに始まり、第2楽章最初の主題がヴァイオリンによって奏でられ、今回はこの第2主題がクライマックスを築きます。再度運命の主題が登場し、コーダに向かいます。コーダは第2主題が断片的に歌われ、クラリネットの最弱音で静かに終わります。
第3楽章はワルツ。3つのワルツからできています。コーダになるとクラリネットとファゴットによって「運命の動機」が暗く登場し唐突にフォルティシモで和音が6回打たれて終わります。
第4楽章は長調の「運命の主題」で始まります。主部に入ると激しい第1主題と急速な第2主題が次々と現れ、金管楽器が運命の主題を奏でます。続いて展開部に入り2つの主題が展開され再現部に入ります。属七の和音で全休止になった後、コーダが始まります。コーダは運命の動機が凱旋の行進曲のように高らかに響き、急速なテンポのメロディを経て最後に第1楽章の第1主題が金管によって奏でられ力強く全曲を閉じます。

2023年7月30日 (日)

7月30日 名曲100選 管弦楽曲篇・96 火の鳥

ストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」はロシアの民話に基づいて1910年に作曲されました。
ストーリーは、イワン王子が火の鳥を追ってカルチェイの魔法に庭に迷い込み、黄金のリンゴの木のところで捕らえます。その時火の鳥の魔法の羽を手に入れます。王子は13人の乙女に会いそのひとりと恋に落ちますが、彼女はカスチェイの魔法で囚われの身となっていた王女でした。夜が明けてカスチェイたちが戻ってきてイワンは捕らえられ、魔法で石に変えられようとしますが王子が魔法の羽を振ると火の鳥が現れ、カスチェイの命が卵の中にあることを王子に告げ、王子が卵を破壊してカスチェイは滅び王子と王女は結ばれる、というお話です。
初稿では4管編成の大編成で上演時間も50分弱と、「春の祭典」や「ペトルーシュカ」に比べて1.5倍近い長さでしたが、この曲は数度にわたって書き直されています。
1911年には管弦楽組曲として改版されましたが、この版は殆ど演奏されません。
続いて1919年に2管編成となりチェレスタがオプションとなった20分程の演奏時間の組曲が作られました。編成も演奏時間も手ごろなので現在最も多く演奏されるものです。
さらに1945年に2管編成でさらなる改訂版が作られました。初版より年月が経っていて、ストラヴィンスキーの作風も大きく変わっているため劇的効果が弱くなっている事もあり、あまり演奏されません。
どちらにしても、後の作曲されるペトルーシュカや春の祭典に比べるとロマン派の流れを強く引きずった華美なバレエ音楽です。

1919年版は演奏した事がありますが、どの曲も魅力的な曲ばかりです。コントラバスがarco(弓で弾く)と pizz(指ではじく)に分かれて演奏する低音のうねるようなメロディから始まる序奏、火の鳥の踊り、火の鳥のヴァリアシオン、オーボエの美しい旋律から始まる王女たちのロンド、シンコペーションを多用した強烈なメロディの魔王カスチェイの凶悪な踊り、ハープの伴奏でファゴットがメロディを演奏する子守歌、ホルンの遠くから聞こえるようなメロディで始まる非常にドラマチックなフィナーレ。様々な魅力が凝縮された音楽です。

2023年7月29日 (土)

7月29日 名曲100選 映画音楽(洋画)篇・96 栄光への脱出

「栄光への脱出」は1958年に発表されたレオン・ユリスの小説を1960年に映画化した同名の映画の主題曲です。
ホロコーストを生き延びたヨーロッパのユダヤ人多数がパレスチナへ移民しようとしましたが、そのほどんどはイギリスが設けた移民枠を超えた不法移民で、イギリス軍につかまりキプロス島の難民キャンプに送られていました。そこでエクソダスと名付けた貨物船を手に入れて極秘の内にパレスチナへ送ろうとし、イギリス軍との緊迫した駆け引きの末にパレスチナへたどり着いたもののイスラエル建国に次々と困難な状況が訪れる、という内容。
主題曲の「Exodus」(栄光への脱出のテーマ)  はアーネスト・ゴールドが作曲しフェランテとタイシャーのピアノをフィーチャーした演奏で全米2位の大ヒットとなりました。
また多くのポップス系オーケストラに取り上げられましたが、その中でもスタンリー・ブラックが指揮するロンドン・フェスティヴァル管弦楽団の演奏はコーラスも入った劇的な曲で私のイチオシです。

2023年7月28日 (金)

7月28日 名曲100選 室内楽曲篇・96 弦楽六重奏曲第1番 (ブラームス)

ブラームスは、ベートーヴェンの音楽への意識が非常に強く、最初の交響曲を作曲するのに着想から21年の長い年月が費やされたのは有名な話ですが、室内楽の分野でも同様の強い意識がありました。そのためにベートーヴェンが16曲を残した弦楽四重奏曲は結局40歳になるまで発表する事が出来ませんでした。但し、ベートーヴェンが手を付けなかった弦楽六重奏曲は若い時期に作曲をすることができました。
弦楽六重奏曲第1番変ロ長調op.18は27歳の時に作曲されています。
編成はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが各2本ずつというものです。特に第2楽章の変奏曲はロマンティックな主題を元に非常に美しい楽章で、ルイ・マル監督の映画「恋人たち」で使われて馴染みになっています。
弦楽六重奏曲の特徴である、中低音域の充実はヴィオラやチェロの音を好んだブラームスの得意とするところで、弦楽四重奏曲では味わえない深い表現を聴くことができます。

2023年7月27日 (木)

7月27日 名曲100選 海外のロック篇・96 イマジン

ジョン・レノンはビートルズ解散前の1969年からソロ活動を始めていました。1971年発売の2枚目のアルバム「イマジン」は世界中でヒットしイギリス、アメリカ、オーストラリアなど数か国で1位となりました。そのタイトル曲でシングル発売されたのが「イマジン」です。
反戦・平和を訴え続けていたジョン・レノンが、国家や宗教や所有欲いよって起こる対立を無意味なものとして、ユートピア的な世界を想像し共有していけば世界は変わるという内容を訴えかけた曲です。
アメリカの放送音楽協会が1999年に発表した「20世紀を代表する100曲」のひとつに選定され、イギリスのギネス・ワールド・レコーズが2002年に3万人以上からアンケートを取った「イギリス史上最高のシングル曲」では、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」に次ぐ2位を獲得、2004年にローリングストーン誌が選んだ「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500」では第3位(1位はボブディランのライク・ア・ローリングストーン、2位はローリングストーンズのサティスファクション)に選ばれています。

2023年7月26日 (水)

7月26日 名曲100選 名曲100選 歌劇のアリア篇・96 あなたの声に心は開く

歌劇「サムソンとデリラ」は1874年に完成したサン=サーンス作曲の作品です。
旧約聖書の「土師記」第13章から第16章のサムソンの物語に基づくものです。当初は聖書の物語を題材としている事への抵抗感や初演時に好評を得られなかった事などで成功作とは言い難い作品でしたが、次第に評価され現在ではサン=サーンスのオペラの中で最も上演回数の多い作品となっています。
ペリシテ人に支配されたヘブライ人のを率いて暴動をおこしたサムソンは、ペリシテ人の美女デリラの誘惑に心を奪われてしまい、唯一の弱点である髪を切られて捕らえられてしまいますが、最後に神の加護を得てペリシテ人の寺院を押しつぶしてしまうというストーリー。
第2幕第3場でデリラをはねつけようとするサムソンに対し歌った愛の歌が「あなたの声に心は開く」です。サムソンとデリラの二重唱になっています。

2023年7月25日 (火)

7月25日 名曲100選 日本のフォーク・ニューミュージック篇・96 風と落葉と旅びと

「風と落葉と旅びと」は、1972年に衝撃的なデビューをしたフォーック・デュオ チューインガムのデビュー曲です。
デビュー当時12歳の松田りかと10歳の松田マミの姉妹デュオで作詞作曲も松田りか。
この年齢で、こんな素敵な歌が書ける上に、きちんとハモって弾き語りができるというのはスゴイと当時びっくりしました。その後ポプコン2回、世界歌謡祭1回のグランプリも受賞しています。
正式には1985年まで活動したようです。

2023年7月24日 (月)

7月24日 名曲100選 交響曲篇・96 交響曲第3番「オルガン付き」

いよいよ今週からトップ5のご紹介になります。
サン= サーンスの交響曲第3番ハ短調op.78は、オルガンが使われているために「オルガン付き」という愛称でも呼ばれています。パリ音楽院を卒業後教会のオルガニストから音楽家としてのキャリアをスタートしたサン=サーンスが当時の自分の注ぎ込める全てを注ぎ込んだのが、この曲です。
3管編成で、オルガンとピアノを使うため、演奏できるホールが限られている事もあってなかなかプログラムに取り上げられる事は多くは無いですが、最近はパイプ・オルガンが備え付けられたホールも増えたので、アマチュアでも時々演奏されるようになりました。私も2回演奏しています。
曲は、2楽章構成になっていて、それぞれが2つの部分に分けられているため通常の4楽章の構成と本質的には変わっていません。また、循環主題を使った構成の新しさもあります。
第1楽章 第1部 ハ短調、第2部 変ニ長調で通常のソナタ形式の楽章と緩徐楽章に相当します。第1部は静かな導入部の後弦楽器の細かい動きによる第1主題が現れます。この主題は循環主題となります。第2主題は穏やかながら少し不安定なメロディです。最後は第2部の断片も現れ、やがて第2部に入ります。第2部はオルガンが伴奏する中弦楽器によって美しい瞑想的な主題が演奏されます。中間部では低弦が循環主題をピチカートで演奏し、主部に戻っていきます。最後は消えるように終わります。
第2楽章 第1部 ハ短調、第2部 ハ長調でスケルツォとフィナーレ楽章に相当します。第1部はエネルギッシュなスケルツォ主題から始まり、その後循環主題が変形されて続きます。トリオに相当する部分では木管楽器とピアノが躍動的に動き、第2部の主題とトリオが交錯しながら後半に突入します。オルガンの壮麗な響きによってスタートする第2部はピアノ連弾の響きも合わせて長調に変奏された循環主題が提示された後ファンファーレ、フーガなど様々な技巧を駆使して変化に富んだへ展開の後オルガンの大音量を合わせたオーケストラの力感と共にクライマックスを形成し曲を閉じます。
この曲、映画「ベイブ」のシリーズで効果的に使われていて印象的でした。

2023年7月23日 (日)

7月23日 名曲100選 管弦楽曲篇・95 弦楽セレナード(チャイコフスキー)

チャイコフスキーの弦楽セレナードハ長調op.48は1880年に作曲された曲。弦楽合奏曲の中で最も人気の高い曲のひとつです。
1878年にモスクワ音楽院の講師を辞職して、大作から遠ざかっていた時期に作曲されたものです。
セレナードと言っても、もともと弦楽五重奏のための交響曲の発想から着手された事もあって、交響曲と同じ4楽章の作品になっています。また第1楽章冒頭の序奏が終楽章の最後に回帰されるのも特徴のひとつです。
編成は小さな弦楽合奏団ではなくて、規模の大きい弦楽合奏を想定して作曲されているため、コントラバスもdivisi(パート内で複数に分かれて別の音を演奏する)が指定されていたりします。
第1楽章は「ソナチネ形式の小品」。展開部を欠くソナタ形式。重厚な序奏から始まります。この序奏はスタッフサービスのCM「おー人事」でも有名になったメロディ。第1主題は、チャイコフスキーらしい流麗なメロディとはちょっと異なるメランコリックな主題。第2主題は細かい音符が囁くような主題で、提示部が終わるといきなり再現部に入ります。コーダに序奏のメロディが戻ってきて終結します。
第2楽章はロンド形式のワルツ。A-B-A-C-A-B-Aとなっています。ワルツのメロディは親しみやすいものです。Bのパートはフェルマータで止まったりテンポに変化をつけています。中間部のCのパートでは短調になって少しくぐもったような曲調になりますが、それも長く続かず主要パートに戻っていきます。
第3楽章はエレジー。エレジーは哀歌と略されますがこの楽章は長調。長調で哀愁を表現しているチャイコフスキーらしいメロディックな楽章です。三部形式ですが、特に長い中間部のメロディの美しさはチャイコフスキーの作品中でも1,2を争うものだと思います。
第4楽章は変奏曲とロンド形式を合わせた楽章です。素朴なロシア民謡を用いた穏やかな序奏から始まり最後に主題のモチーフを提示していきます。主部に入ると民謡「緑のリンゴ畑にて」を使った主題が始まります。最後に第1楽章の序奏が再現されクライマックスを築きながらコーダを迎えます。
ドヴォルザークの弦楽セレナードとエルガーの弦楽セレナードを合わせて三大弦楽セレナードと呼ばれる事もありますが、この3曲の中でもダントツの人気を誇る作品です。

2023年7月22日 (土)

7月22日 名曲100選 映画音楽( 洋画) 篇・95 星に願いを

「星に願いを」(When You Wish upon a Star)は、1940年に公開されたディズニーのアニメーション映画「ピノキオ」の主題歌です。
作詞ネッド・ワシントン、作曲リー・ハーラインによる曲で、アカデミー作曲賞、歌曲賞を受賞し、ディズニーを代表する曲となりました。
2004年にアメリカン・フィルム・インスティテュート(AFI)が発表した「AFIアメリカ映画100年シリーズ」の一環としたアメリカ映画で使われた曲から選んだ「アメリカ映画主題歌ベスト100」では第7位に選ばれています。
因みに、1位は「オズの魔法使い」の「虹の彼方に」、2位は「カサブランカ」の「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」、3位は「雨に唄えば」、続いてムーン・リバー、ホワイト・クリスマス、ミセス・ロビンソンの次ぐ7位という事でした。
「星に願いを」は、コオロギのジミニー・クリケット(声はクリフ・エドワーズ)が歌ってオープニングと最後のシーンで流れる曲です。
多くの歌手にカバーされ、またジャズのスタンダードにもなっていますし、オーケストラでもクリスマス・シーズンを中心にポップス系や子供向けのコンサートでは頻繁に演奏される曲です。

2023年7月21日 (金)

7月21日 名曲100選 室内楽曲篇・95 思い出

「思い出」(Souvenir for violin and piano)は1904年にヴァイオリニストであり作曲家でもあったチェコのドルドラによって作曲されました。
ヴァイオリンとピアノのための性格的小品というシリーズの中の1曲。
優美で繊細な旋律が有名な曲ですが、重音やフラジオレットを使った中間部もとても魅力的な曲です。

2023年7月20日 (木)

7月20日 名曲100選 海外のロック篇・95 スペイス・オディティ

「スペイス・オディティ」(Space Oddity)は、1969年発売のデヴィッド・ボウイ2枚目のアルバム「スペイス・オディティ」のタイトル曲です。発売当時は、まだデヴィッド・ボウイの名前もそれ程売れていない事もあってイギリス以外では注目されませんでしたが、1972年のアルバム「ジギー・スターダスト」のヒットの後1973年に再リリース版が全米15位のヒットとなりました。
歌詞は宇宙飛行士トム少佐と地上管制室との会話からなっていて、ロケットの発射が成功し、カプセルに移動してから、通信回線が不具合を起こして通信が途絶えてしまうという内容です。
とても神秘的な音作りをして効果を出して、当時としては斬新な曲でした。

2023年7月19日 (水)

7月19日 名曲100選 歌劇のアリア篇・95 復讐の心は地獄のように我が心に燃え

「復讐の心は地獄のように我が心に燃え」(Der Holle Rache kocht in meinem Herzen)は、モーツァルトの歌劇「魔笛」の第2幕で歌われる、夜の女王のアリアです。
夜の女王が娘パミーナにナイフを渡して宿敵ザラストロを殺害するように命じる場面で歌われるコロラトゥーラ・ソプラノの超難曲のひとつです。
一点へ音(F4=ト音記号の第一間のファの音) から、三点へ音(F6=五線譜の上に遥かにはみ出したファの音)まで2オクターヴを歌いこなす必要がある上に、やたらと音が跳ぶので正しい音程で歌い通すのが至難の業です。
歌詞は、パミーナに対しお前がザラストロを殺さなければ、お前はもはや私の娘では無い、と歌う激しい内容です。

 

2023年7月18日 (火)

7月18日 名曲100選 日本のフォーク・ニューミュージック篇・95 風に立つライオン

「風に立つライオン」は、さだまさしが1987年にリリースした曲です。
長崎大学熱帯医学研究所の医師としてケニアに派遣され、現地医療に従事した柴田絋一郎をモデルとして制作した楽曲で、柴田が日本にいる恋人に宛てた手紙の形式をとって作詞されています。
後にこの曲に感銘を受けた大沢たかおが、映画化を視野に入れた小説化をさだまさしに依頼し2013年に単行本が刊行され2015年に映画が公開されています。勿論主演は大沢たかお(島田行一郎)、主題歌はさだまさしの「風に立つライオン」です。
映画や小説では、島田医師は武装集団に遭遇して銃撃戦に巻き込まれ行方不明(おそらく殺された) になってしまい、彼が献身的に看病し心を開いた戦士ンドゥングが彼の精神を受け継いで医師となり、東日本大震災の被災地に現れるという結末になっていますが、実際の柴田医師は「風に立つライオン」がリリースされる10年以上前に帰国しています。
楽曲の長い後奏には、「アメイジング・グレース」のメロディが使われています。ボレロのリズムが刻まれる中ハミングやスキャットで歌われるこの部分も非常に印象的です。
本当は個人的には、さだまさしの曲の中では「主人公」が一番好きなのですが、敢えてトップ10にはこの曲を取り上げました。

2023年7月17日 (月)

7月17日 名曲100選 交響曲篇・95 交響曲第4番(ブラームス)

交響曲第4番ホ短調op.98は、ブラームス最後の交響曲で1885年に作曲されました。
古典的な4楽章構成で、第2楽章にフリギア旋法を用い、終楽章はバロック時代の変奏曲形式のシャコンヌを用いるといった古典への回帰をより強く意識した作品になっています。
第1楽章は、ヴァイオリンの下降旋律から始まる第1主題がいきなり出てきます。ゆったりとした第2主題は木管によって提示されますが、この楽章は第1主題が支配している印象があります。
第2楽章は、展開部を欠くソナタ形式の緩徐楽章。ホルン、木管によってフリギア旋法の動機が奏でられ、動機に基づく第1主題が静かに演奏されます。第2主題はチェロによって提示されます。個人的に、ブラームスの交響曲の中で最も美しく厳粛だと思う旋律です。これが再現部で楽器を増やしてコラール風に演奏されますが、ここが圧巻。この部分を聴くだけでブラ4を聴いた価値があるというもんです。
第3楽章はスケルツォ的な楽章。この楽章トランアングルが活躍するのですが、厳粛な第2楽章と重厚な第4楽章に挟まれた第3楽章でトライアングルはちょっと馬鹿っぽい感じがします。何故トライアングルを登場させたのかブラームスに聞いてみたいものです。
第4楽章はE-F♯-G-A-A#-B↑-B↓-E の8つの音符からなる旋律がシャコンヌ主題になります。楽章自体は提示部で15の変奏、展開部で8つ、再現部で7つの合計30の変奏から出来ています。「ハイドンの主題による変奏曲」でもわかるようにブラームスの変奏は大胆なので、流して聴いただけでは変奏だったのかわからないものもあります。コーダは主題が劇的に再現され速度を上げて緊張感を高めて終結します。

2023年7月16日 (日)

7月16日 名曲100選 管弦楽曲篇・94 マ・メール・ロア

「マ・メール・ロア」はラヴェルが寓話「マザーグース」を題材に作曲した曲です。はじめはピアノ連弾用の組曲として1910年に完成しましたが翌年に管弦楽用の組曲に編曲されました。同じ年から翌年1912年の初めにかけてバレエ曲に編曲されています。バレエ版は新たに前奏曲や間奏曲などが付け加えられています。
ベスト10に選んだのは、コンパクトながら劇的なオーケストレーションが施されている組曲版です。
編成は2管編成で金管楽器もホルン2本だけ。但し多数の打楽器とハープとチェレスタが登場します。
眠れる森の美女のパヴァーヌ、親指小僧、バゴダの女王レドロネット、美女と野獣の対話、妖精の園の5曲からなる組曲で、実際にマザーグースを題材にしたものは第1曲、第2曲、第5曲です。
特に第5曲は眠れる森の美女で眠っている王女が王子の口づけで目をさますシーンを金管楽器を使わずにスケールの大きなオーケストレーションで華麗にエンディングを迎えています。

2023年7月15日 (土)

7月15日 名曲100選 映画音楽(洋画)篇・94 E.T.

「E.T.」は1982年公開のSF映画。監督スピルバーグ、音楽ジョン・ウィリアムズで、アカデミー作曲賞など4部門を受賞しています。
アメリカのある森林に地球の植物を採集する目的で着陸した宇宙人は、宇宙船の着陸を察知した政府機関の人間が近づいて来たために危険を察知した急遽離陸しますが、一人の宇宙人が乗り遅れて取り残されてしまいます。
付近の住宅地に住む10歳の少年エリオットの家に逃げ込んだところをエリオットに見つかってしまいますが、エリオットは兄と妹と共に宇宙人(E.T.)をかくまう事にしました。
やがて政府機関に見つかることになり、逃亡劇の末E.T.は川に転落して瀕死の状態となりますが、エリオットも同時に体調を崩してしまいます。エリオットとE.T.は精神的にも肉体的にも繋がっていましたが、その繋がりを断ち切ったためエリオットは回復しますがE.T.は死亡と認定されます。ところがエリオットが話しかけるとE.T.は突然蘇生。大人たちの追っ手を振り切って森へ急ぎ、そこへやって来た宇宙船に乗り込んで E.T. は宇宙に去っていきます。
この作品は批評家からも高評価を受け、興行的にも全世界で記録的な成績を上げました。
音楽もジョン・ウィリアムズの代表作のひとつとして映画に強い効果を与えた作品だと思います。特に自転車が浮遊するシーンで演奏されるフライングは感動的でした。


2023年7月14日 (金)

7月14日 名曲100選 室内楽曲篇・94 弦楽四重奏曲第1番(チャイコフスキー)

チャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番ニ長調op.11は1871年2月に作曲されました。
この曲を作曲した頃は、チャイコフスキーはニコライ・ルービンシテインが創設したモスクワ音楽院で教師を務めていて、作曲家としてはまだ駆け出しの頃でした。ルービンシテインが少しずつ作曲家としての評価が上がってきたチャイコフスキーに自作曲のコンサートの開催を勧めましたが、演奏会を行う小ホールに向いたプログラムを組むのに曲数が足らず、急遽作曲されたのが、この曲です。
第2楽章の冒頭のメロディがあまりに有名で、速度・発想記号として書かれたAndante cantabile(アンダンテ・カンタービレ)が2楽章の冒頭からのメロディに対する曲名として、固有名詞化しています。

オーソドックスな4つの楽章からなる曲です。
第1楽章 8分の9拍子、ソナタ形式。ちょっとチャイコフスキーらしいメロディックな感じが無くて主題の印象が薄いかなと思います。コーダはチャイコらしさ満開の華麗なものです。
第2楽章 有名なアンダンテカンタービレ。ウクライナ民謡を題材にした美しい主題と素朴な雰囲気漂う中間部がとっても魅力的にかみ合っています。私個人的には、大林亘彦の映画「転校生」が思い浮かんでしまいます。ちなみに、「転校生」では、「トロイメライ」「タイスの瞑想曲」などが使われていますが、音楽を作る予算が無かったために著作権フリーのクラシック音楽を使ったそうです。
第3楽章 ニ短調のスケルツォ。短調で悲し気な主題から始まりますが全体的な印象は活気に漲るものです。
第4楽章 民俗舞曲風の第1主題と憂鬱なゆったりとしたメロディを挟んだソナタ形式の楽章です。最後は静かになったところから一気にコーダに向かって激しく楽器がかき鳴らされます。

2023年7月13日 (木)

7月13日 名曲100選 海外のロック篇・94 ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード

「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」は1970年5月に発売されたビートルズのアルバム「レット・イット・ビー」に収録されアメリカでシングルカットされてビートルズ最後となる Billboard Hot100の1位となった曲です。
すでにビートルズ自体のメンバー同士の確執があり、ポール・マッカートニーはその緊張感からインスピレーションを得て作った曲です。作詞作曲名義はレノン= マッカートニーとなっていますが実際はポール・マッカートニーが作詞作曲したバラードです。
ポールがスコットランドに所有している農場の近くに実在する道からインスパイアされたもので、曲の解釈はジョン・レノンへの思いを綴ったものである、とか神への祈り、ラブソングなど様々な受け取り方があるようです。
「長く曲がりくねった道」はどうしても手が届かないもの、決してたどり着けない扉への延々と続く道という意味合いだそうです。
実際、ポールはこのアルバム発売前の1970年4月にビートルズからの脱退を発表し、1971年3月に正式に解散となってしまいました。

2023年7月12日 (水)

7月12日 名曲100選 歌劇のアリア篇・94 ブリュンヒルデの自己犠牲

「ブリュンヒルデの自己犠牲」は4夜にわたる楽劇「ニーベルンクの指環」の最終日「神々の黄昏」の最後を飾る曲です。
ブリュンヒルデは神々の長ヴォータンの娘であり英雄をヴァルハラに導くワルキューレの一人であり、人間の英雄ジークフリートの妻という「ニーベルンクの指環」第2作の「ワルキューレ」から活躍する主要人物のひとりです。
ジークフリートがハーゲンの奸計によって殺され、ブリュンヒルデはジークフリートの亡骸を焼く炎の中に飛び込んでハーゲンはラインの乙女によって水中に引き込まれ、指環は彼女たちの元に。炎は天上にも広がり神々が居並ぶヴァルハラ城も炎上して神々の時代に終わりを告げ終幕となります。

2023年7月11日 (火)

7月11日 名曲100選 日本のフォーク・ニューミュージック篇・94 ダンデライオン~遅咲きのたんぽぽ

「ダンデライオン~遅咲きのたんぽぽ」は松任谷由実が作詞作曲をして、原田知世主演のミュージカル「あしながおじさん」の主題歌として提供した曲です。1983年7月に原田知世のシングルがリリースされ、8月に松任谷由実自身の歌がリリースされました。
松任谷由実と原田知世は、原田の映画デビュー作「時をかける少女」や、大ヒットした「私をスキーに連れてって」の主題歌や挿入歌の提供など深い関係があります。
「ダンデライオン」はユーミンのシングルの中でも特筆して優しい歌だと思います。

2023年7月10日 (月)

7月10日 名曲100選 交響曲篇・94 交響曲第9番(ベートーヴェン)

好き嫌いは別にしても、ベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調op.125が、交響曲のひとつの大きな山であることに間違いは無いでしょう。
特に日本では年末の風物詩にもなっていて、年末になれば殆どのプロのオーケストラはこの曲通称第九をこぞって取り上げます。複数回演奏するオケもあります。
また、自治体の後援や協賛を受けているオーケストラは自治体の年末の行事として毎年第九の演奏会を行うところもありますし、周年記念などの祝典で合唱団を募って演奏する事もあります。
ベートーヴェンはシラーの「歓喜に寄す」に感動して曲を付けようと思い立ったのはかなり初期の頃です。まだ第1番の交響曲も作曲する前だった頃で、当初は交響曲にするつもりは全く無かったようです。1817年にロンドンのフィルハーモニック協会からの交響曲の作曲依頼があり、これをきっかけに作曲を始めたようです。
CDの収録時間が74分になったのは、第九が1枚で収まる事に配慮したためという話があるほど、音楽面だけでなく社会的にも影響力がある曲です。
第九は古典的な4楽章から構成されています。第1楽章はソナタ形式、第2楽章は複合三部形式のスケルツォ、第3楽章は変奏曲の緩徐楽章ですが、終楽章がご存知の通り合唱を伴う大規模な楽章になっています。
第九の大きな特徴は、合唱が入る事、終楽章にそれまでの3つの楽章の主題が回想される事(「運命」では第4楽章に第3楽章の回想がありますが)、ホルンを初めて4本使ったりティンパニ以外の打楽器を使ったりと編成をかなり大きくしたことでしょう。
バス弾きとしては、終楽章のそれまでの楽章の主題を「これは歓喜の音楽では無い!」と否定するレシタティーヴォと、歓喜の主題の提示というベートーヴェン最大の大仕事があって溜飲を下げる曲です。

2023年7月 9日 (日)

7月9日 名曲100選 管弦楽曲篇・93 ロメオとジュリエット(プロコフィエフ)

シェークスピアの「ロメオとジュリエット」は、シェークスピア作品の中でも最も強く作曲家にインスピレーションを与えた作品のひとつでしょう。
オペラ作品ではベッリーニの「カプレーティとモンテッキ」、グノーの「ロメオとジュリエット」、管弦楽曲ではベルリオーズの劇的交響曲、チャイコフスキーの幻想序曲、ミュージカル「ウェストサイド物語」はこの題材を近代アメリカに移したものとして知られています。
プロコフィエフは、これをバレエ音楽にしました。但し、バレエ化するに当たって悲劇的な結末をハッピーエンドに変えた筋立てにしました。これはジュリエットが死んでしまうと最後踊ることが出来ないと考えたからだそうです。その後振付家たちと相談し悲劇的な結末を踊りで表現できる事がわかり、結末を原作通りにしたようです。
バレエは4幕で2時間半を要するものでしたが、その後プロコフィエフは4つの演奏会用組曲にまとめました。
現在演奏会で演奏されるのは、組曲そのものを演奏する事は多くなく、それぞれから抜粋して(特に第1第2から) 演奏する事が多いようです。
私は1度だけ演奏したことがありますが、ストーリーに準拠する形で組曲や全曲版から抜粋したものでした。
全部で51曲ある曲の中からお勧めは以下の通りです。
第10曲 少女ジュリエット(無邪気な女の子ですが時々大人の部分が顔を出します)、第13曲 騎士たちの踊り( 一番有名な曲です) 、第39曲 ロメオとジュリエットの別れ(とっても壮大な曲です) 第51曲 ジュリエットの墓の前のロメオ。
時間があれば他にも良い曲がありますし、それぞれのキャラクターの動機が使われていますので通して聴くと音楽がより一層分かり易いでしょう。

2023年7月 8日 (土)

7月8日 名曲100選 映画音楽(洋画) 篇・93 運が良けりゃ、踊り明かそう、時間通りに教会で、など

ミュージカル映画「マイ・フェア・レディ」は1964年に製作されました。
原作はバーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」。言語学者のヒギンズ教授が、下町育ちの粗野で下品な言葉遣いの花売り娘イライザをレディに仕立て上げられるかどうかをピッカリング大佐と賭け、様々な訓練を施していくうちに、イライザを愛するようになり、イライザも言葉だけではなく自分を見つめ直していくというロマンティック・コメディです。
出演は、イライザがオードリー・ヘプバーン、ヒギンズがレックス・ハリソン。その他競馬場でイライザを見初める貴族フレディには、テレビドラマ シャーロック・ホームズシリーズでホームズを演じたジェレミー・ブレットがキャスティングされていました。
ブロードウェイで大ヒットしたミュージカルではイライザをジュリー・アンドリュースが演じていましたが、映画化をしたワーナーはアンドリュースが無名と考え、オードリーに声をかけました。オードリーはイライザ役はジュリー・アンドリュースが自分の物にしている事を考えて断り続けましたが、ワーナーの社長の考えは変わらず引き受けざるを得なかったそうです。
オードリーは歌のレッスンや音楽の勉強などに時間を費やしましたが結局大部分をマーニ・ニクソンの吹き替えになりました。
レックス・ハリソンの独りよがりの性格などもあって、撮影はかなり難航したようですが、元のミュージカルが素晴らしかった事もあって、映画は大成功に終わりアカデミー賞は作品賞、監督賞、主演男優賞など8部門を受賞しましたが、主演女優賞はノミネートすらされませんでした。
結局、この年のアカデミー主演女優賞は、「メリー・ポピンズ」でメリー・ポピンズを演じたジュリー・アンドリュースが受賞するという皮肉な結果になりました。

そうは言っても作品自体はとても魅力的な曲が詰まっています。
イライザの父親とその仲間が歌う「運が良けりゃ」(With  a Little Bit of Luck)
「ei」の発音が「ai」になってしまうコックニー言葉 (ロンドン下町の方言) を直すために何度も繰り返し発音させられた「The rain in Sapin stays mainly in the plane」がようやく正しく発音できるようになったイライザが歌う「スペインの雨」
このミュージカルで最も有名な曲「踊り明かそう」(I could Have Danced All Night)
既に紹介済みですが、競馬場デビューしたイライザに一目惚れした貴族フレディがイライザの住まいにやってきて歌った「君住む街角」(On the Street Where You Live)
 結婚式を挙げるために盛装したイライザの父親が歌う「だがまず教会へ」(Get me to the Church on Time)
  などどれを取っても素敵な歌です。

2023年7月 7日 (金)

7月7日 名曲100選 室内楽曲篇・93 ピアノ三重奏曲(ラヴェル)

ラヴェルのピアノ三重奏曲イ短調は1914年に作曲されました。
ラヴェルはピアノ三重奏という曲が作曲上非常に難しいジャンルであるという認識を持っていたようです。ピアノと弦楽器の音色の調和、3つの楽器のバランス、特にチェロを聴き取りやすくする事に腐心したようです。
結局ラヴェルは管弦楽的な書法を持ち込んで対処しました。
古典的な4楽章の形式を踏襲していますが独創性を忘れずに発揮しています。
第1楽章はバスク地方のソルツィーコという舞曲を模したものです。8分の8拍子ですが、それぞれの小節は3+2+3というリズムパターンに分割されています
第2楽章はパントゥムという四行連詩の形式を再現しています。
第3楽章はパッサカリア。
第4楽章は4分の5拍子や4分の7拍子が交互に現れる変則的な拍子を使った華麗なコーダを持つ終楽章です。

2023年7月 6日 (木)

7月6日 名曲100選 海外のロック篇・93 素直になれなくて

「素直になれなくて」(Hard to Say I'm Sorry) は、アメリカのブラス・ロック・バンド シカゴが1982年に発表した楽曲で、全米シングルチャートでも1位を記録した代表作のひとつです。
シカゴは1970年代半ばからロック・バンドからアダルト・コンテンポラリーへ路線変更をして「愛ある別れ」「朝もやの二人」などのヒットを出しましたが70年代後半からヒット曲に見放されていました。この曲は久々のヒット曲となったわけです。
「素直になれなくて」は全米だけでなく、カナダ、アイルランド、イタリア、日本などでも1位となり全英でも4位と世界中で大ヒットしました。70年代前半の「サダディ・イン・ザ・パーク」などのブラスが活躍したシカゴから比べれば物足りない感じも無いではないですが、元々ロックと言ってもビートの効いた音楽を歌っていたわけではないので、これはこれで進化系のひとつだったのでしょう。

2023年7月 5日 (水)

7月5日 名曲100選 歌劇のアリア篇・93 恋とはどんなものかしら

歌劇「フィガロの結婚」は、フランスの劇作家ボーマルシェの戯曲で、「セヴィリアの理髪師」の続編にあたる物語です。
前作でフィガロの活躍で無事結婚できたアルマヴィーヴァ伯爵とロジーナでしたが、今は倦怠期。フィガロは伯爵家の小間使いスザンナと結婚式を上げる直前で、伯爵が初夜権復活を目論んでスザンナを誘惑しようとしますが、そこへかつてフィガロから「借金を返せなければ結婚する」という証文を取ったマルチェリーナ(実は盗賊に息子フィガロを盗まれた実の母)や、前作でロジーナとの結婚を邪魔されたバルトロなどが加わり大混乱。フィガロの計略で伯爵夫人の仲を取り持ち、無事に終幕を迎えるという喜劇です。
「フィガロの結婚」は、「魔笛」と並ぶモーツァルトの代表作で、「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」「そよ風に寄せて」「とうとううれしい時が来た」など数々の魅力的なアリアが歌われます。
「恋とはどんなものかしら」(Voi che sapete)  は、第2幕第3場で、伯爵夫人とスザンナが囮捜査の為に小姓のケルビーノに女装をさせて伯爵とケルビーノの密会現場を押さえ動かぬ証拠を突きつけようと計画する場面で、女装したケルビーノが歌うアリアです。
ケルビーノは実際はメゾソプラノの女性歌手が演じるいわゆるズボン役なので、女装すると元の女性に戻るだけという面白さもあります。

2023年7月 4日 (火)

7月4日 名曲100選 日本のフォーク・ニューミュージック篇・93 赤い風船

加藤登紀子は多才なミュージシャンです。フォーク歌手でもあり、シャンソン歌手、作詞家、作曲家、シンガー&ソングライターと様々な場面で活躍されています。
1966年、2枚目のシングル「赤い風船」でレコード大賞新人賞を受賞。1969年には「ひとり寝の子守唄」でレコード大賞歌唱賞を受賞。その後も「知床旅情」「琵琶湖周航の歌」「リリー・マルレーン」「この空を飛べたら」「百万本のバラ」などのヒット曲を産んでいます。
作詞作曲家としても石原裕次郎の「わが人生に悔いなし」(作曲のみ)、中森明菜の「難破船」などを提供しています。
「赤い風船」は作詞水木かおる、作曲小林亜星の曲。5コーラスの曲で、「赤い風船」を持って楽し気に遊んでいる男の子を歌った1番から始まりますが、実はとっても悲しい曲です。
赤い風船で遊んでいた坊やの手から風船が飛んで行ってしまって、それを追いかけて行った坊やが大きな通りに飛び出し車に轢かれて死んでしまい、もう坊やの歌も声も聞くことができない、という内容の曲です。
加藤登紀子は、感情を抑えて歌って、余計に悲しい気持ちを引き出しています。

2023年7月 3日 (月)

7月3日 名曲100選 交響曲篇・93 交響曲第2番(シベリウス)

シベリウスの交響曲第2番ニ長調op.43は1901年に作曲されました。
オーソドックスな4楽章構成ですが、第3楽章から第4楽章は連続して演奏されますが第3番では第3楽章と第4楽章が1つの楽章になり、最後の第7番では全楽章が切れ目ない構成になるという過程のひとつとされています。
編成も普通の2管編成です。
第1楽章 フィンランドの風景を思わせる楽章です。第1主題は木管による森のざわめきとホルンによる陽の光のような暖かいメロディが融合して始まります。全体的に比較的穏やかな楽章です。
第2楽章 暗い緩徐楽章です。低弦のピツィカートに乗ってフォゴットで提示される主題は重々しく北欧を感じさせます。Bパートでは高揚感が現れますが限定的で、やはり重々しさは残ります。
第3楽章 スケルツォ。弦楽器の荒々しいスケルツォと、牧歌的なトリオがあり再度スケルツォに戻ります。ここでは第4楽章の第1主題の動機が顔を出します。再びトリオが現れますが弦楽器を中心とした繋ぎの音楽が奏でられ徐々に盛り上がって行き終楽章に突入します。
第4楽章 第1主題は弦楽器の力強い動機とトランペットの応答で開始されクライマックスを築きます。やがて静寂が訪れ低弦によって蠢くような伴奏が入る中木管楽器が楽器を変えながら第2主題を演奏します。金管楽器が加わり高らかに終止の旋律が歌われますが、弦のピツィカートに促されるように展開部へ入ります。再び第1主題の再現から第2主題に入りますが、今度は第2主題は長大で最大のクライマックスを形成し、第1主題を使った賛歌が奏され全曲を閉じます。

 

2023年7月 2日 (日)

7月2日 名曲100選 管弦楽曲篇・92 めじか

「めじか」はプーランクが1923年に作曲した1幕のバレエ音楽です。この中から1939年に5曲を選んで組曲としてまとめました。
バレエ・リュスのディアギレフからの依頼で作曲された明確なストーリーを持たない作品です。「めじか」は若い娘の事で、実際の動物とは全く関係ありません。
この曲の良さは、肩の凝らないエスプリの効いた軽妙な音楽。バレエの作曲は24歳という若い時期でしたが、組曲への編曲は40歳の円熟期に入った時期で、オーケストレーションも全面的に改訂しています。
組曲は、ロンドー、アダージェット、ラ・マズルカ、アンダンティーノ、フィナーレの5曲。
第1曲ロンドーは、短い序奏の後、軽妙洒脱なメロディが展開された行きます。中間部は短調になりエレジックなメロディが出てきますが、再び軽妙なメロディに戻ります。
第2曲 オーボエによる憂愁をたたえるメロディで始まります。20世紀初めの無声映画の劇伴のような音楽です。
第3曲 快活な踊りの音楽です。組曲中最長の6分程度の長さの曲です。
第4曲 管楽器が入れ替わり立ち替わりメロディを担当していきます。
第5曲 この曲だけ聴いてもとっても楽しく、色々な要素が溢れる曲です。途中には第1曲がデフォルメされた形で出てきたりとても快活なフィナーレです。

2023年7月 1日 (土)

7月1日 名曲100選 映画音楽(洋画)篇・92 サムウェア・アウト・ゼア

サムウェア・アウト・ゼアは、アニメーション映画「アメリカ物語」の主題歌です。
「アメリカ物語」はスピルバーグが初めて製作総指揮をしたアニメ映画で、当時のアメリカの長編アニメ映画史上最大のヒットを記録しました。
主人公はネズミのファイベル・マウスクビッツ。ロシアに住んでいたネズミのマウスクビッツ一家は猫の大群に襲われ、アメリカには猫がいないという迷信を鵜呑みにしてアメリカに移住します。
ドイツ経由でアメリカへ向かう船の中でファベルは波にされわれてしまい、空き瓶に入ってニューヨークに流れ着きますが、ウォーレンというネズミに騙されネズミを奴隷のように扱う工場に売られてしまいます。
ウォーレンが実は猫である事を知ったファイベルは、ネコと戦う事になります。
主題歌はシンシア・ワイルらが作詞し、ジェームズ・ホーナーが作曲。リンダ・ロンシュタットとジェームズ・イングラムが歌い、1988年のグラミー賞最優秀楽曲賞を受賞しました。

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