6月19日 名曲100選 交響曲篇・91 交響曲第5番(ショスタコーヴィチ)
いよいよ名曲100選Aパートも最後の10曲ずつになります。
これからは個人的に最も好きな10曲をご紹介していきます。が、ベスト10というわけではありません。
一応、順序は100曲目がイチオシとなるように取り上げますが、音楽の好みは聴く環境や自分の気分で変わるので絶対的なものでもありませんのでご理解の程お願いいたします。
今日はショスタコーヴィチの交響曲第5番ニ短調op.47です。ショスタコーヴィチは15曲の交響曲を作曲していますが、特に9番以前の曲はスターリン体制と自分の音楽との板挟みによる苦悩の歴史です。この第5番は、前年に受けた歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」などへのプラウダ批判により危機的状況にあったショスタコーヴィチが名誉回復のために作曲したとされています。
形式は、純器楽による古典的な形式の交響曲ですが、その裏に秘めたショスタコーヴィチの想いは様々な音楽家によって語られる事になりました。密かにビゼーの「カルメン」へのオマージュが潜んでいるという話もあります。
第1楽章はカノンによって提示される第1主題から始まります。続いて弦楽器の刻みに乗ってヴァイオリンが演奏する第2主題は無調にも聞こえるメロディです。これは「カルメン」の「ハバネラ」が引用されているとも言われています。やがてピアノが登場し展開部に入りクライマックスに達し、第1主題は行進曲風に変奏されていきます。フルート、ピッコロやヴァイオリンソロが第1主題の変奏を静かに鳴らしチェレスタの半音階が加わって楽章を閉じます。
第2楽章はスケルツォ。低弦によって始まります。この楽章もカルメンの引用と思われるメロディが次々と出てきます。トリオはソロヴァイオリンによって奏されるレントラーです。
第3楽章は緩徐楽章。弦楽器を8部に分けて弦楽器と木管楽器と打楽器のみで演奏される楽章です。3つの主題による変奏曲で終始悲痛な響きに満ちています。
第4楽章は木管のトリルとティンパニのトレモロによる急激なクレッシェンドから始まりティンパニの行進曲風のリズムに乗って金管楽器が主題を演奏します。強い音楽が暫く続くと瞑想的な展開があり、ハープの独奏による分散和音の後は小太鼓のリズムにのって冒頭のメロディが弱音で回想され次第に強さを増していきます。カルメンの前奏曲にも使われている闘牛士の音楽の引用とも思われるコーダのメロディが次第に勢いを増し、最後は華々しく強奏され、ティンパニとバスドラムが最強音でリズムを叩いて全楽器がニ音を弾いて幕を閉じます。この楽章には他にも「ジプシーの歌」「セギディーリャ」といったカルメンの引用があるとされています。
この曲はベートーヴェンの「運命」やチャイコフスキーの5番同様、苦悩・悲しみからの勝利への讃歌という非常に分かり易い構成が人気の一翼を担っているのでしょう。
ちなみに、私個人での演奏回数は2回です。
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