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2023年2月20日 (月)

2月20日 名曲100選 交響曲篇・75 交響曲第5番「運命」

交響曲第5番ハ短調op.67「運命」は1808年に作曲されました。第1楽章冒頭でTuttiで演奏される「運命の動機」はクラシック音楽ファン以外でも誰でも知っているフレーズとなっていますね。
この曲は標題音楽の先駆けとも言われる第6番「田園」と並行して作曲されています。抒情的なものは全て「田園」の方に込めて「運命」では極限まで絶対音楽を追求した作品になっていて、その緻密さは他の追随を許さない曲になっています。
ベートーヴェンは、「運命」で様々な試みを行っています。楽章構成は4つの楽章で急-緩-スケルツォ-急というオーソドックスな構成なのですが、中身は従来の交響曲とはかなり異なるものになっています。その試みの中には次のようなものがあります。
①「運命の動機」は第1楽章を支配していますが、他の楽章にも顔を出します。
   このように1つのメロディまたはリズムがほぼ全曲を通して登場するのはチャイコフスキーの交響曲第5番など多くの曲に影響を与えまし  た。
②第3楽章から第4楽章へは切れ目なく移行します。
   慣例的に休みなしで演奏されたり、作曲家の指示によってattaccaと書かれているものとは異なり、第3楽章の終盤が第4楽章への経過部分になっている曲はベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番やメンデルスゾーンのヴァイリン協奏曲(全楽章繋がってます)、シューマンの交響曲第4番などが見られます。
③第4楽章だけですが、今までの交響曲では使われる事が無かったトロンボーン、ピッコロ、コントラファゴットが使われています。
  並行して作曲した田園にもトロンボーンは出てきますが、第9番では上記3つの楽器が全て登場します。これ以降のロマン派の作品には多くの曲でこれらの楽器が使われるようになっていきます。   
④第4楽章では他の楽章(第3楽章)が回想されます。
  これはベートーヴェンの交響曲第9番ではすべての楽章が回想されるという形で用いられていますし、ベルリオーズの幻想交響曲にも何か所か出てきます。フランクの循環形式にも影響を与えています。

第1楽章は、いきなり「運命の動機」が第1主題として使われます。この楽章は緊張感の極致の楽章で、冒頭では「運命の動機」がこの曲のテーマだ!と見栄を切るような形で、フェルマータを使用して協調されますが、このフェルターマも極力短くするのが最近の傾向。それ以降は優しい曲調の第2主題を含めてテンポを落とすことなく最後まで演奏するのが最近の傾向のようです。唯一、変化するのがオーボエのカデンツァのあたりだけというスタイルです。
第2楽章 変奏曲。ヴィオラとチェロによってゆったりとした主題が演奏されます。変奏は4回。途中高らかに奏でられるクライマックスも用意されています。
第3楽章 変則的なスケルツォ楽章。ハ短調。この曲らしく、中間部も美しさや優美さは完全に排除されています。チェロとコントラバスによって地底から這い上がるようなスケルツォ主題が提示され、その後ホルンによって力強く運命の動機が吹き鳴らされます。トリオもチェロとコントラバスによってハ長調で提示されフガートのスタイルで他の楽器が追いかけてきます。スケルツォ主題が再現されるとすぐにコーダへ。このコーダも初めは不気味な雰囲気で演奏され、やがて長調に転じて音量を増し第4楽章へそのまま繋がります。
第4楽章 今までの抑圧された雰囲気が一変して、ドミソの分散和音から構成された華やかな第1主題が、底抜けの明るさで鳴ります。第2主題は運命の動機から派生したもの。展開部に入ると途中第3楽章が回想されますが、一度切り開いた喜びは絶えることなく再度第4楽章冒頭の輝きを取り戻します。最後は執拗なコーダ。ベートーヴェンの交響曲の中では唯一最後の和音がフェルマータで終わります。

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