今日の音楽 5月23日 歌劇「フィデリオ」(再掲載)
以前、N響アワーの「今宵もカプリッチョ」のコーナーでオペラ作曲家の打率、という話がありました。そこで打率10割という作曲家がひとり、ベートーヴェンでした。
様々な分野で作品を残しているベートーヴェンが、ただ1曲しかオペラを作曲していないというのが七不思議のひとつなのですが(もっとも、ドイツの作曲家はウェーバーの後はワーグナーまで殆どオペラの成功例がありませんが・・・)、打率10割とは言っても、この曲非常に難産でした。
第1稿の初演は1805年11月20日アンデア・ウィーン劇場でしたが、観客の大半がフランス人で、ドイツ語のこの作品を殆ど理解できなかったという事もあって不評に終わりました。
第2稿は1806年3月29日に初演され、ある程度の成功を収めましたが劇場側との金銭トラブルで1回再演されただけでした。
第3稿はベートーヴェンが次第に有名になって来た為にベートーヴェン人気に便乗しようという要請で改訂され1814年5月23日に初演され、最終的に大成功を収めました。
この難産は、序曲にも及んでいます。
「フィデリオ」用の序曲は4曲あります。元々ベートーヴェンは、このオペラを歌劇「レオノーレ」として上演したかったため、初期の序曲は「レオノーレ」というタイトルになっています。
①フィデリオ初演のために作曲された序曲・・現在の序曲「レオノーレ」第2番と考えられています。
②第2稿の初演で演奏された序曲・・・現在「フィデリオ」序曲よりも演奏される機会が多い序曲「レオノーレ」第3番。但し、この曲があまりに出来が良すぎた為、本当の所は18分程という長さ(オペラの序曲としてはワーグナーのタンホイザーと並ぶぐらい長い)の為か次の稿で変更されています。
③第2稿のプラハ公演に向けて作曲された序曲・・・現在は序曲「レオノーレ」第1番とされている曲
④この、歌劇「フィデリオ」序曲・・・最も軽快でオペラの序曲として相応しいと考えられています
実は、3.5とも言える曲があります。実は第3稿の初演で「フィデリオ」序曲の完成が間に合わず、「アテネの廃墟」という劇音楽の序曲を借用して演奏されました。
トランペットのファンファーレが鳴り響く、レオノーレ3番は最もベートーヴェンらしい曲かもしれませんが、この軽快な「フィデリオ」序曲も棄てがたい曲です。
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