2011年10月のパイオニア交響楽団第22回定期演奏会のメイン曲は、ベートーヴェンの交響曲第5番ハ短調「運命」でした。
これほど有名な曲ですが、大学以来の本番でした。大学の時は「あの有名な曲」「第3楽章がコントラバスの見せ所」程度がこの曲の感想でしたが、この曲に対しては全然異なる思いで演奏しました。
とにかく、このベートーヴェンの交響曲第5番という曲は、全く隙のない完璧な曲だという思いでした。冒頭の「運命の動機」があまりに有名なため、学生時代にそこに気づかなかったのは勉強不足だったんでしょうね。
「運命」はスコアによって、冒頭の「運命の動機」の最後の音を2回ともフェルマータで伸ばすものもありますが、普通は1回目はフェルマータなしになっています。昔は、この運命の動機を大袈裟に演奏して2回目のフェルマータで思いっきり伸ばす傾向にあったのですが、最近のトレンドでは、あくまでもインテンポでフェルマータも極限まで短くして流れを止めない傾向にあります。つまり、第1楽章は、ゆったりと成りがちな第2主題を含めてこの運命の動機のフェルマータと再現部前のオーボエのカデンツァ以外は緊張感に満ちたインテンポで演奏されてこそ、「運命」全体の流れが確立されるということです。
その後も第2楽章に緩徐楽章を置かず第3楽章のスケルツォも第1楽章の流れを持ち込んだ緊張感高い音楽のまま、終楽章の喜びの爆発を効果的にできるのです。全てに計算しつくされたベートーヴェンの真骨頂的な音楽です。
そういう緊張感高い音楽を作ったので、同時に初演した交響曲第6番の「田園」は全く色の違った曲にしたのでしょうね。