今日の音楽 8月20日 大序曲「1812年」
チャイコフスキーの大序曲「1812年」op.49は1882年8月20日にアリターニの指揮でモスクワで初演されました。
1880年にチャイコフスキーが楽譜出版社から依頼された曲は、ニコライ・ルビンシュテインが音楽部長として就任した産業博覧会のための曲で、3つの題材の中から選ぶようにという依頼でした。①博覧会のための序曲②ツァーリ即位25周年のための曲③正教会の雰囲気を持つ救世主ハリストス大聖堂開基のためのカンタータ。
チャイコフスキーは意に沿わない作曲はしないとして突っぱねていましたが、友人であるニコライから直接依頼され自分でも凡庸で騒々しい音楽と意識しながら作曲したものが、この「1812年」でした。
結局博覧会は中止になりましたが、建設中の救世主ハリストス大聖堂で開催されたモスクワ芸術産業博覧会主催のコンサートで初演され、批評家の間ではチャイコフスキーが思っていた通り、凡作と片付けられてしまったそうです。その後各地で演奏され次第に評価が高まって今ではチャイコフスキーの管弦楽曲の代表作のひとつとなりました。
この曲は、ロシアがナポレオン率いるフランス軍を撃退するという具体的な歴史が音楽的に表現されており、様々な曲が引用されています。冒頭ヴィオラとチェロのソロによって演奏されるのは正教会の聖歌「神よ汝の民を救い」に基づくもの。次いでロシアの行軍、ボロジノ地方の民謡に基づく戦いの場面、ここではフランス国家「ラ・マルセイエーズ」がフランス軍を象徴する形で絡んできます。また、演奏会では実際に大砲の空砲が登場したりする事もある大砲の音も出てきます。
次いで冒頭のメロディがTuttiで演奏され、ロシア帝国国歌が鐘の音とともに轟き、ロシア軍の勝利で終わっています。このロシア帝国国歌はスラヴ行進曲でも使われていますが、ソヴェト時代にロシア帝国国歌の演奏が禁止されたため、グリンカの歌劇「イワン・スサーニン(皇帝に捧げし命)」の終曲に書き換えられた「シュパーリン版」も存在しています。
とにかく派手で演奏効果抜群ですが、大砲をどうするかなどお金もかかる曲です。私が演奏した時はシンセサイザーを使いました。
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