7月17日にティアラ江東大ホールでパイオニア交響楽団第28回定期演奏会が開催されます。
前半が ボロディンの歌劇「イゴーリ公」序曲、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、後半がブリテンのシンプル・シンフォニーとバーンスタインの「ウェストサイド・ストーリー」のシンフォニック・ダンスです。
ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスのヴァイオリン協奏曲が3大ヴァイオリン協奏曲と呼ばれていますが、その3曲に負けずとも劣らない人気を誇るのが、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲です。
同じチャイコフスキーのピアノ協奏曲がニコライ・ルービンシュタインに演奏不能と言われたのと同様に、このヴァイオリン協奏曲も当時ロシア最高のヴァイオリニストだったアウアーに「演奏不能」と言われて初演を拒否しました。これを救ったのがヴァイオリニストのアドルフ・ブロッキーでした。
ブロッキーの初演は、初演を指揮したリヒターも演奏したウィーン・フィルもこのロシア臭い曲に理解を示さなかった為に散々な出来でした。それでも、ブロッキーは、この曲をあちこちの演奏会で取り上げ続け、やがてチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、ヴァイオリン協奏曲史上最も人気ある曲のひとつとなりました。ブロッキーがいなければ、この曲は忘却の彼方だったのでしょう。
第1楽章は1st ヴァイオリンの弱奏による導入主題からはじまり、第1主題の断片が演奏された後、独奏ヴァイオリンが第1主題をカデンツァ風に奏でるところから始まります。第2主題は叙情的な旋律で、展開部はオーケストラの強奏ではじまり最後にカデンツァが演奏されます。再現部も静かに始まり、やがて次第に高まっていきチャイコフスキーらしく力強く終結します。
第2楽章は弦楽器は弱音器をつけて演奏します。憂いを含んだ旋律で終始します。最後は第3楽章の第1主題の断片を演奏し、そのまま切れ目無く第3楽章に突入します。実は、ここで演奏上の問題点があります。
この第3楽章の断片は最後は低弦のみが残って演奏するのですが、終楽章は冒頭からこの断片を使った勢いのある導入部になるのですが、弱音器ははずす必要があります。ヴァイオリンの弱音器と異なり、コントラバスの弱音器はどんなに急いでも外すのに1秒以上かかるので、つまり第2楽章と第3楽章の間では弱音器は外せないという事・・・・という事で、我々コントラバス軍団は2楽章最後の休符の時に半分、第3楽章の導入部が終わったところで半分という具合に、分けて外す事にするわけです。
第3楽章はロシアの舞曲トレパークに基づく音楽。非常に快活で激しい音楽です。
ヴァイオリン協奏曲の場合、オーケストラが最も気を使うのが音量です。プロの奏者でソロを弾くようなヴァイオリニストは、オーケストラのヴァイオリン奏者の2倍以上の音量は平気で出せますが、それでもオーケストラのヴァイオリンは10人以上。弦楽器全部を合わせると30人近い人数になるので、さすがにアマチュアのオーケストラが大きな音で演奏すれば、ソロは掻き消されてしまいます。
楽譜にフォルテ!と書いてあっても、ソロが主役の場所と、オーケストラのみの場所では全く音量を変えなければならないわけです。
アマチュアのオーケストラの場合、そこをキチンと弾き分けて演奏できるかが音楽を理解して演奏しているか否かを見極めるポイントになるでしょうね。