いよいよ、演奏会も2日後に迫って来ました。明日はG.P.(ゲネプロ)という通し練習を行って、本番の日は、実際に演奏会を行うステージで午前中にステージ・リハーサル、午後本番を迎えるわけです。
アマチュアの場合ほとんどが、実際の会場で練習できるのは当日のみ、良くて前日夜からなので、そのホールの音響をチェックして演奏に反映するわけです。残響が多いホールでは、短い音はより短く弾かなければならないし、逆の場合は、スタッカートでもあまり短くしないで演奏するという事もありますし、ホールによっては低音が聴こえにくいところもあるなどバランスにも若干の変更を加えたりします。ただ、ステージ・リハーサルはお客さんがいないところでやるので、お客さんが入ったらまた音響が変わるのでそれも考え合わせるのですが。
チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」の第4楽章は、他の交響曲の終楽章とは全く趣の違った曲です。この曲が結構キライという人が多いのは、絶望的な最後を迎えて爽快感も何も残らないからというのが理由のひとつのようです。われわれ演奏する側も同じで、せっかく演奏してもスッキリしないので好き嫌いが分かれる曲です。
終楽章の冒頭の速度は、一応Adagio Lamentosoとなっているのですが、実はこれには異説があります。というのも元々の自筆譜ではAndante LamentosoになっていたものがAndanteがペンで消されてAdagioに書き換えられているからです。この書き換えの筆跡はチャイコフスキー自身では無く後に再演をした際の指揮者のものである事がわかっていますので、Andanteが正しい!と結論が出れば良いのですが、初演の際のプログラムにはAdagio と掲載されていて、この変更は練習の際にチャイコフスキーが変更したものを、後に再演の指揮者が書き込んだ、と主張する人もいるのでやっかいです。従って、現在でも多数派ではないものの速めのAndanteで演奏する指揮者もいます。今回の演奏会ではAdagioですけどね。
この楽章の独断的な聞きどころは次の2つです。
①フルートという楽器は、煌びやかな伸びのある音という印象がありますが、低音部分は音量は出せないものの柔らかく豊かな音色が特徴です。ファゴットという楽器は、第1楽章冒頭のソロにような野太い音の印象が強いですが、高音域に行くと音量は出せないものの芯のある硬い独特の音色が特徴です。第4楽章冒頭では、弦楽器の合奏のクレッシェンドのピークから1拍遅れて3本のフルートとファゴットが同音のFis(ファ♯)を吹きます。
この音色効果を是非楽しんでもらいたいと思います。
②もうひとつが、弦楽器が奏でる第1主題。実は冒頭では、この主題のメロディを弾いている楽器はひとつもありません。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが弾いている音を交互にひとつずつ拾っていくと主題のメロディになるわけです。これが再現部になると第1ヴァイオリンが主題を演奏するのですが、聴こえ方が違っているのがわかりますか?対向配置(ステージ向かって左に第1ヴァイオリン、右に第2ヴァイオリンを配列するオーケストラの配置)だと、よくわかるのですが。。。
勿論、この楽章の最後まで残るのはチェロとコントラバスだけ。心臓の鼓動が止まる事を暗示しているとも言われているpizzなども聞いて頂きたいのですが、弾く方としては心臓の鼓動を表現するというのはどうも・・・