パイオニア交響楽団第24回演奏会に向けて・2
前プロの荘厳序曲「1812年」は、1880年に1882年にモスクワで行われる産業芸術博覧会の祝典のために依頼されて作曲された曲です。チャイコフスキー自身はこういった機会音楽を作曲するのに抵抗があったのですが、友人のニコライ・ルービンシュタインが博覧会の音楽担当になっていたため1ヶ月あまりで作曲しました。
この曲は、1812年のナポレオンのロシア遠征を表現した描写的な音楽で、非常にストーリー性の高い音楽となっています。
チャイコフスキーの音楽は、ご存知のようにp(ピアノ)が5つ出てきたりf(フォルテ)が5つ出てきたり非常にダイナミックレンジの広い激しい音楽が多いのですが、この曲も激しさでは負けない曲で、コントラバスも冒頭以外は殆ど出ずっぱりで交響曲1曲分ぐらいのスタミナが奪われる曲です。効果音も知られていて、乱打されるカリヨンと大砲はこの曲ならではです。
大砲は、実際の空砲を使ったり、大太鼓を複数台使ったり様々な工夫で演奏されますが、最近は電子楽器を使用する事も多いようです。(今回の演奏会では、どうするのかはお楽しみ)
とにかく、今回はメインプロが「悲愴」という人生をテーマとした深い曲なので、前半は肩の凝らないただただ楽しめる曲という感じで選曲されています。
「1812年」の冒頭は、ロシア正教会の「神よ汝の民を救い」という聖歌にもとづいて作られたチェロとヴィオラの六部からなる合奏で始まります。これは「ロシアの民をフランス軍の侵攻から救いたまえ」という願いがこめられています。やがて管楽器も登場し序奏部のクライマックスを迎え、オーボエの第1主題にチェロ・バスが絡んだ部分はフランス軍の侵攻による混乱を表していると言われています。実は、この部分やたらに臨時記号が多い上行音階が続くのですが、演奏者は混乱できないというハードなところが続きます。やがて、2拍子系の音楽に変わり、最後はチェロ・バスが素っ裸の下降音階で第1部を閉じます。
チャイコフスキーの場合、序曲もソナタ形式を踏襲していますが、この第1主題は印象的な主題の多いチャイコフスキーの主題としてはとっても影が薄い感じですね。
« 今日の音楽 1月14日 タレガ礼賛 | トップページ | 今日の音楽 1月15日 うわさの男 »
コメント