今日の音楽 8月14日 交響曲第8番(ブルックナー)
1996年8月14日は、指揮者チェリビダッケの命日です。
チェリビダッケといえば、ゆったりしたテンポ、ビブラートなしの弦楽器、レコーディング嫌い、厳しい練習などで知られていますが、その大元になる思想は「音楽は生き物」という考え方でしょう。要するに、ホールの響きなど演奏する環境によって同じ音楽でも表現の仕方が変わるという事で、作曲家のメトロノームの数字で指定したテンポは意味が無いとまで言っているようです。従って、演奏がいつまでも残るレコーディングを嫌っていたという事ですね。
チェリビダッケといえば、最も得意とするレパートリーはブルックナーです。非常にゆったりとしたテンポがブルックナーの宇宙的な音楽に合ったのかもしれませんが、例えば通常1時間20分程かかる交響曲第8番を晩年の演奏で1時間45分かけたという記録も残っています。多分、これぐらいの遅いテンポになると管楽器泣かせでしょうね。息が続かないからねぇ。
ブルックナーの交響曲第8番は、伝統的な4つの楽章からなる曲ですが彼の交響曲では最も長い曲です。1887年に完成していますが、送付されたスコアを見た指揮者のヘルマン・レヴィに「演奏不能」と言われ、改訂を余儀なくされ1890年に改訂版(第2稿)が完成され初演されました。今では殆どこの第2稿で演奏されます。が、ブルックナーの版はもっと複雑で、ブルックナーの弟子シャルクが第2稿を元に1892年に出版した初版(改訂版)から始まり、1939年ハースが出版したハース版(原典版)、1955年に第2稿に基づきノヴァークが出版したノヴァーク版第2稿、1972年に第1稿に基づきノヴァークが出版したノヴァーク版第1稿などがあり、それぞれかなりの部分で違っています。
ブルックナーの版については、非常に詳しいブルックナーフリークの方々がいるので細かいところはお任せしますが、興味のある方は覗いてみてはいかがでしょうか。
ブルックナーのスコアにこれだけの版があるのは、ひとえにブルックナーの性格にもよるようです。彼は、人の意見にやたらに耳を傾けるので、何か言われてはスコアを直し・・・を繰り返し、スコア自体がどれが最新のものかわからなくなっちゃったという事らしいです。
チェリビダッケ指揮で第1楽章です
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