今日の音楽 6月11日 交響詩「ドン・ファン」
1864年6月11日は、ドイツ後期ロマン派を代表する作曲家、リヒャルト・シュトラウスの誕生日です。
R・シュトラウスは初めは交響詩を中心とした管弦楽作品を多く作曲し、その後オペラに力を注いでいましたが、戦後はブーレーズ、シュトックハウゼン、ノーノ、ケージらの前衛作曲家に比べて古臭い作風で過去の作曲家とされてしまったようです。晩年は指揮者としての活躍の方が際立っており、セルやベームといった20世紀を代表する指揮者を育てています。
初めの管弦楽作品を多く作曲した時代では「ドン・ファン」「死と変容」「ティル・オイゲン・シュピーゲルの愉快な悪戯」「ツァラトゥストラはかく語りき」「ドン・キホーテ」「英雄の生涯」などたくさんの傑作交響詩を発表していますが、シュトラウスの管弦楽作品の多くは標題音楽が多く、絶対音楽の最高峰である交響曲でさえ「家庭交響曲」「アルプス交響曲」といった描写的な作品で、現在でも親しまれている絶対音楽は2つのホルン協奏曲ぐらいでしょう。
その後の、オペラに熱中した時代では最初の成功作であった「サロメ」から始まり、「エレクトラ」「ばらの騎士」「町人貴族」「影のない女」「カプリッチョ」など数多くの傑作を残しています。また、当時はワーグナー、ヴェルディ、プッチーニと悲劇的な作品が多い中シュトラウスのオペラは喜劇的要素が強い作品という事が特徴でしょう。
1888年に作曲された交響詩「ドン・ファン」は、シュトラウスの交響詩として最初の大成功作で彼の出世作とも言える作品です。ドン・ファンは勿論、モーツァルトも取り上げたスペインの伝説的プレイボーイ。冒頭に奏でられる「悦楽の嵐」から下降音階で表現される「女性のテーマ」が冒頭を飾り、理想の女性を求めるドン・ファンが女性に出会い、絶望する・・・を繰り返し、最後にはドン・ファンの死を暗示して終わるというとても楽しい作品です。
ところで、R・シュトラウスの作品は曲自体はわかり易い曲が多いのですが、非常に演奏が難しく、とても演奏できそうもない細かい音符が含まれています。これについてはいくつかのエピソードが残されています。ウィーン・フィルでアルプス交響曲のリハーサル中に、ヴィオラ奏者が指揮をするシュトラウスに対して「この曲は演奏不能の場所がある」と指摘したところシュトラウスは「そんな事は百も承知。弾けても弾けなくても同じ効果が得られるようになっているからテキトーにやっておけば良い」と言ったとか。また、「楽譜にある音を全て弾こうと思ってはいけない」とも・・・
要するに、シュトラウスの曲は楽譜どおり弾けなくてもそれなりに聴こえるように作られているらしいので、アマチュアオーケストラの皆さんも選曲の時にスコアを見て唖然とせずに一歩踏み出してみたらいかがでしょうか。・・・もっとも、ある程度弾けないと曲にはならないと思いますが。
ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団で前半です。
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