アマオケとモーツァルト・ベートーヴェン
最近、大学を出たてのアマチュア演奏家と話をすると、ベートーヴェンやモーツァルトのシンフォニーを全く経験していない人が結構多い事に気がつく。我々が高校・大学の頃は何といっても演奏会で取り上げるのはベートーヴェンは多かった。現に、私は大学卒業までに演奏したシンフォニーの中で最も多かったのはベートーヴェンの3曲だった。
何故、ベートーヴェン、モーツァルトの経験者が少ないのか。高校にしても大学にしても入学してから初めて楽器をさわる人は結構多い。特にヴァイオリン以外の弦楽器は殆どがそうである。そういう初心者にとっては、誤魔化しがきかないが基礎をしっかりやれば演奏できるベートーヴェンは最適な曲のはずである。モーツァルトは逆に学生では難しいかもしれない。モーツァルト独特の明るさや軽やかさを表現するのは難しいかもしれないからである。
そのひとつの理由は、管楽器奏者の多さである。特にフルートやクラリネットは1学年にだいたい2~3人はいる。トランペットもホルンも結構多い。これらの楽器は中学校でブラスバンドを経験している人が多い。金管は、そのままブラスバンドに入る人も多いが、フルートなどはブラバンではあまり目立たない存在なのにオーケストラでは主役である。フルートはどこのアマオケでも欠員が殆ど無いぐらい多い。1学年に2人いるだけでそのオケには8人のフルート奏者がいる。そのフルート奏者全員がステージに乗るためには、3曲のプログラムだとしてもフルート2本の普通の2管編成の曲だけでは賄いきれない。その為に、3管編成の曲を入れる必要が生じる。モーツァルトのシンフォニーの多くのようにフルートが無い曲などプログラムに入れることは言語道断である。トロンボーンの問題もある。モーツァルトのシンフォニーには全くトロンボーンが使われていない。ベートーヴェンも運命と第九に3本、田園に2本使われているのみである。ホルンも英雄で3本、第九で4本使われている以外は2本である。しかも第九はアマオケでは合唱が入るのでなかなか演奏できる機会が無い。
それでは、メイン以外でこれらの管楽器をこなせないか、という事である。勿論前プロや中プロと呼ばれる1曲目、2曲目の大編成の曲はかなり多い。が、前プロ(序曲)は短い。中プロでは、まずコンチェルトで大きな編成は少ない(ソロが音量的に負けるので)。他の管弦楽の曲は、大きくなればなるほど、特殊打楽器やハープなどが必要になり費用の問題が発生する。
従って、3年から4年で卒業してしまい、年に1回か2回の演奏会しかできない学生オケでは編成の小さいシンフォニーは取り上げにくいという事情があるのである。
数年間という長いスパンで考えられる社会人オケの方がまだこういう曲は取り上げ易いのである。