音楽小話:大作曲家のお好きなメロディ
クラシック音楽の世界にも、多くの作曲家に愛されたテーマ(作品)は存在する。例えば、18世紀イタリアの作曲家パイジェルロの歌劇「水車屋の娘」の中のアリア「ネル・コル・ピウ(うつろな心)」は変奏曲の題材として非常にたくさんの作曲家に取り上げられている。メジャーなところではパガニーニのヴァイオリン独奏曲<「うつろな心(ネル・コル・ピウ)」の主題による序奏と変奏曲>、テオバルト・ベームのピアノ伴奏つきフルート曲<「ネル・コル・ピウ」による序奏と変奏>、ベートーヴェンのピアノ曲<パイジェッロの歌劇「水車屋の娘」の二重唱「うつろな心」による6つの変奏曲ト長調>、ジュリアーニのギターのための協奏作品<うつろな心による大変奏曲>など、があります。
ところが自分の作曲した曲や主題、モチーフが気に入って様々な形を変えて曲づくりをした作曲家も少なからずいます。その代表的な例としてベートーヴェンがあります。
1800~1801年にかけて作曲された 12のコントルダンスWoO.14の第7番、わずか1分に満たない短い曲ですが、非常に聴きなれたメロディの曲です。この曲をそのまま転用したのが、バレエ「プロメテウスの創造物」の終曲。これも1800~1801年に作曲されています。さらに、この曲を変奏曲のテーマとして転用したのが1802年に作曲されたピアノのための<「プロメテウスの創造物」の主題により15の変奏曲とフーガ 変ホ長調 作品35>。そして、このメロディを使った頂点の曲が 交響曲第3番変ホ長調「英雄」作品55、1803年~1804年にかけて作曲されています。このテーマは第4楽章に使われ、しかも第4楽章は古典的な交響曲には珍しい変奏曲のスタイルを取っています。この4曲まとめて聴いてみるのも面白いかもしれませんね。
ちなみに、この英雄交響曲、最終的には「英雄=実際はボナパルト交響曲」という表題は破棄されているのですが、その原因については、以前は英雄ナポレオンに捧げる曲として書いたが、ナポレオンが皇帝になり諸外国征服の戦争を起したことに絶望してベートーヴェン自身がこの譜面の表紙を破棄したという説が有力だったようですが、最近では、ベートーヴェンのナポレオンに対する尊敬の気持ちは最後まで失われておらず、寧ろそのような英雄に捧げる曲に4回目の使いまわしのテーマを使った事に自分自身で恥じ入って表題を取り下げたという説もあるようです。
ちなみに、さすがに音楽の最高峰の交響曲に使用した後はこのメロディも封印され、二度と使われることはありませんでした。
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