いよいよ、このシリーズもメインの「展覧会の絵」に突入します。
「展覧会の絵」は、原曲はムソルグスキーのピアノ曲。1874年に催された親友のハルトマンという画家の追悼展覧会で、絵と絵の間をそぞろ歩きながらながら見た印象を作曲したものです。ムソルグスキーはロシア五人組の作曲家のひとり。斬新なメロディや構成の曲を作曲していますが、極度のアル中で生活も荒んでおり未完成の作品も多い。完成していてもオーケストレーションが適当な曲もあり、彼の作品は他の人の補作や編曲で日の目を見ている物も少なくありません。
「展覧会の絵」はその中でもメロディ・題材・構成どれを取っても後世の音楽家にアレンジの意欲を与えるに十分な作品であり、様々なアレンジが存在しています。特に1970~80年代には、クラシック音楽以外の分野でも様々なアレンジをされて当時最も有名なクラシック曲のひとつでした。EL&P(エマーソン・レイク&パーマー)による展覧会の絵は、あの額縁の中が白紙になっているジャケットと共に大流行。その後、日本の電子音楽の第一人者冨田勲によるシンセサイザーの演奏、天才ギタリスト山下和仁のギターソロ版など様々な演奏が発表されています。
オーケストラ版のアレンジもかなりの種類があります。そして、その多くのアレンジが荒削りだったムソルグスキーの原典版を改訂した、リムスキー=コルサコフによるピアノ版をベースにしています。オーケストラアレンジでは、リムスキー=コルサコフが弟子のトゥシュマロフと共作したもの、「キエフの大門」にオルガンを含む大規模なストコフスキー版、アシュケナージ版などがありますが、ラヴェルによる編曲版が、展覧会の絵の管弦楽版の代名詞と言えるほど多くの人に愛されています。絵画を表すにぴったりの色彩豊かで、劇的なオーケストレーションがその魅力だと思います。
ラヴェル版の編成は、フルート(ピッコロ含む)、オーボエ、コールアングレ、クラリネット、バスクラリネット、ファゴット、コントラファゴットの3管編成、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバに加えてアルト・サクソフォンとユーフォニウムまたは小さいチューバ、ハープ2本と弦楽合奏及びチェレスタ。打楽器は、ティンパニ、大太鼓、小太鼓、シンバル、トライアングル、サスペンデッドシンバル、シロフォン、グロッケン、ムチ、銅鑼、鐘、ラチェットです。
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