名曲のお話 シンフォニー編 7
ベートーヴェンの交響曲第7番と第8番は、「運命」「田園」と「第九」に挟まれて、イマイチ一般的には地味な扱いを受けているが、やはり5番、6番の後、非常に魅力的な作品だと思う。第7番と第8番は性格がまるで異なる曲である。第7番が「動」であれば第8番は「静」であろう。但し、第8番は「静」ではあるが、決しておとなしい曲ではない。
第7番は、リストが「リズムの聖化」と言ったように、全楽章躍動感溢れるリズムで表現されている。緩徐楽章である第2楽章でさえ、四分音符,八分,八分,四分,四分というリズムが楽章を支配しているのである。ベートーヴェンの曲中最長の序奏を持つ第1楽章は、序奏の後半にオーボエとフルートで奏せられるタン・タ・タンという付点八分音符+十六分音符+八分音符のリズムによって支配され、第2楽章は2小節の管楽器の導入の後、チェロ・バスで演奏される先程書いた タン・タ・タ・ター・ターのリズムに乗ったオブリガートと後半のフーガから構成される。第3楽章はタ・タラ・タ・タラ・タ・タタタ・タタタ・タタタ・タ(何のこっちゃ)とトリオのタ~ラタのリズム、最終楽章は、主題こそ異なるがリズム的にはタッカ・タッカまたはタン・タカ・タンの推進力で最後まで突っ走る。まあ、読んでいてもさっぱりわからないと思うが、それぐらいリズミカルなシンフォニーなのである。私の場合、この第7交響曲には思い入れがある。高校1年でコントラバスを始めて最初の演奏会のメイン曲がこの曲であった。弓を持ってわずか6ヶ月。まだ、普通のボウイングさえも安定しないのに、このリズムがきちんと表現できるわけもなく、あっという間に本番が終わってしまった。いつか、きちんとこの曲を演奏したいと思っていた夢は、大学4年の時に叶えられた。今でも、過去何十回とやっている演奏会の中で、一番出来が良かったと思える演奏でリベンジを果たす事ができたのである。
ちなみに、この7番、TVドラマの「のだめカンタービレ」の主題に使われているので、これから暫くブームになるかな?
第8番は、30分程度の短い曲で、古典に戻ったような曲である。勿論、中身を良く見ると1番や2番とは大きく異なっており、特に最終楽章はそれまで無かった、転調の連続という古典を逸脱した手法で書かれたりしており、やはり8番目の曲なのであるが。
第8番の第1楽章は、第7番と正反対にいきなりtuttiで第1主題が演奏される典型的なソナタ形式である。第2楽章は、ベートーヴェンがメトロノームを発明したメルツェル氏を讃えて作曲した合唱曲「タ・タ・タ・カノン(親愛なるメルツェルさん)」を主題にした曲で、メトロノームのカチカチカチというリズムを刻む音が木管楽器によって演奏されてスタートする。第3楽章は、5番以降使われていたスケルツォから、メヌエット風な楽章に戻して作曲されてある。第4楽章もいきなりあわただしい主題からはじまり、展開部では短いフレーズ毎に転調をくりかえす。ここの転調しているところの分散和音と主題の三連符が、コントラバスにとってこの曲を難曲にしているのである。この曲は聴くのは好きだが弾きたくない曲である。
« 更新情報11/11 | トップページ | アンコールについて »
コメント