思い出の1曲 シンフォニー編 2
第九に次いで、ヤリガイを感じたシンフォニーは、ありきたりではあるが同じくベートーヴェンの交響曲第5番「運命」である。古典派以前の曲は、ほとんどがコントラバスはチェロとのユニゾン(正確にいえば、コントラバスは記譜より1オクターヴ実音が低いのでオクターヴ・ユニゾンではあるが)なので、かなり難しい。つまり同じパッセージを弾くのでも、チェロは4本指のポジショニングであるから短三度、たとえばミファソがポジション移動無しで弾けるが、コントラバスの場合は、完全二度(たとえばドレ)しか弾けないのでポジション移動や移弦が自然と多くなる。ロマン派以降ではそのあたりの楽器の特性を考慮して、チェロとベースがかなり異なる譜面になる場合が多い。
横道にそれたが、そんなわけでベートーヴェンあたりはその過渡期で難しさと、ベースの特徴を兼ね備えた曲が多いのである。「運命」のコントラバスの見所は有名な第1楽章でも無ければ、流麗な第2楽章(この楽章はチェロが大活躍する)でもなく、勇壮な終楽章でもない、スケルツォの第3楽章である。スケルツォ、トリオとも低弦のフレーズからはじまるが、特に音域を考えるとスケルツォは明らかにコントラバスが主体である。
残念ながら、ハ短調という調整は4弦のコントラバスは苦手である。というのも基音の最低音の「ハ」=「ド」の音が出ない(その3度上の「ミ」が最低音)ので1オクターヴ上げるとチェロの最低音と同じ音程になってすしまう。この「運命」もスケルツォはハ短調、トリオはハ長調なので、5弦ベースでないと本当の音は弾けないのではあるが。。。